親知らず周りの歯茎の痛みでお困りの方へ
「親知らずのあたりの歯茎が痛いんだけど…これは何が起きているの?」と、まだ親知らずを抜歯していない歯の周りに痛みを覚える人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、親知らずで歯茎が痛むときに考えられる4つの原因と、その見分け方について詳しく解説します。また、受診までにできる応急処置と、避けた方がよいことについても分かりやすく説明します。
ぜひ最後までご覧ください。
監修:
親知らずで歯茎に痛みが出る4つの原因
親知らずが原因で起こる痛みは、大きく4つに分けられます。歯そのものではなく歯茎に痛みが出ている場合に多いのが、智歯周囲炎(ちしししゅういえん)です。親知らずの周りの歯ぐきに細菌が入り込んで起こる炎症で、歯ぐきが赤く腫れて押すと痛むという訴えの多くはこれにあたります。
ただし、中にはむし歯が原因になっている方もおられます。むし歯が神経まで進むと、炎症が歯の根の先へ広がり、その部分の歯ぐきが腫れて痛むことがあるからです。痛む場所はご自身でも特定しにくいため、歯の痛みを歯ぐきの痛みと感じている場合もあります。
そのため、痛みの出どころが歯ぐきなのか歯そのものなのかは、レントゲンで生え方と歯の状態を確認しないと分かりません。ただ、考えられる原因を知っておくと、ご自身の状態を整理する手がかりになります。ここからは、その4つを順に見ていきましょう。
① 智歯周囲炎(親知らずの周りの歯ぐきの炎症)
まず考えられる原因です。親知らずが斜めに生えていたり半分だけ顔を出していると、歯ぐきが歯の一部にかぶさって「フタ」のような状態になります。このフタの下は歯ブラシが届かないため汚れが溜まり、細菌が増えて炎症を起こします。
歯ぐきが赤く腫れ、押すと痛み、膿が出たりにおいが気になることもあります。上あごよりも下あごに多く、10代後半から30代の方に起こりやすいと言われています※1。
この「半分だけ生えている」という状態が関係することは、研究でも報告されています※2※3。
※1)智歯周囲炎の好発年齢・発生部位、萌出痛・う蝕痛との鑑別について
※2)ウィンター分類で垂直位(まっすぐな向き)の下顎第三大臼歯は、ほかの位置と比べて智歯周囲炎を生じる可能性が高く、水平位ではその可能性が低下する。21件の研究(患者6,895名、智歯周囲炎を生じた下顎第三大臼歯1,913本)を対象とした系統的レビューおよびメタアナリシス。
※3)智歯周囲炎は、現在、埋伏第三大臼歯を抜去する最も頻度の高い理由である。ただし、感染やその他の関連疾患がない場合には抜歯の適応とはならない。19件の研究を対象とした系統的レビュー。
② 生えかけで歯ぐきが押される痛み(萌出痛)
親知らずが生えてくる時期そのものに出る痛みです。痛みの出方は2つあります。ひとつは、親知らずが周りの歯ぐきや隣の歯を押すことで起こる、鈍い圧迫感のような痛みです。もうひとつは、親知らずが歯ぐきを突き破って顔を出すときの痛みです。
どちらも、細菌による炎症ではなく、押される・破られるという物理的な刺激による痛みです。そのため、きれいに生えきってしまえば落ち着くこともあります。
ただ、生えるスペースが足りないまま途中で止まってしまうと、①のフタが残ることになります。そのため、萌出痛から智歯周囲炎へ移っていくこともあります。
③ むし歯が進んで歯ぐきが腫れている
親知らずは一番奥にあるため磨き残しが多く、むし歯になりやすい歯です。むし歯が神経まで達して放置されると、炎症が根の先へ移り、その部分の歯ぐきが腫れて痛むことがあります。つまり、痛みの出どころは歯ぐきでも、原因は歯の内部にあるという状態です。
しかも、影響を受けるのは親知らずだけではありません。親知らずと手前の歯の間は汚れが溜まりやすく、手前の歯まで一緒にむし歯になることがあります。
④ 親知らずが歯ぐきや頬に当たっている
①〜③に比べると多くはありませんが、上の親知らずが外側に傾いて生えていると、噛むたびに頬の内側や下の歯ぐきに当たり、その部分が傷ついて痛むことがあります。腫れではなくヒリヒリした痛みが続く場合は、この可能性も考えられます。
痛み方から見当をつける
ここまでの4つを、痛み方の違いで並べると次のようになります※1。
| ①智歯周囲炎 | 親知らずを覆う歯ぐきが痛む。押すと痛い、脈打つような痛み。腫れ・膿・におい・口が開けにくい・飲み込むときの痛みが出ることもあります |
|---|---|
| ②萌出痛 | 奥の歯ぐきや隣の歯が押される鈍い圧迫感。歯ぐきを突き破って出てくるときにも痛みます。親知らずが生えてくる時期と重なります |
| ③むし歯由来 | はじめは歯そのものが痛む。冷たいもので響き、進むと何もしなくてもズキズキします。さらに根の先まで炎症が及ぶと、噛むと痛い・歯が浮いた感じが出て、その部分の歯ぐきが腫れます |
| ④歯ぐきの傷 | 頬の内側や向かい合う歯ぐきがヒリヒリする。当たると痛く、白っぽい傷や噛んだ跡が見えることもあります |
なお、これら4つは単独ではなく、複数が重なっていることもあります。たとえば、むし歯のある親知らずが智歯周囲炎も起こしている、という状態です。
親知らずの痛みがひいても「治った」とは限りません
親知らずの歯茎の痛みは、軽い段階であれば数日で落ち着くことがあります。だからこそ「治ったからもういいか」と思ってしまいがちです。ただ、痛みが消えることと、原因がなくなることは別の話です。
原因によって、痛みの消え方には2つのパターンがあります。
智歯周囲炎の場合
炎症そのものは体の力で一時的に収まることがあります。しかし、汚れが溜まる歯ぐきのフタはそのまま残ります。つまり、また汚れが溜まれば同じことが起こります。
しかも、腫れやすいタイミングには傾向があります。睡眠不足や過労、風邪などで体調が落ちているときに急に強く出やすく、「忙しい時期や大事な予定の前に限って腫れる」というお話もよく伺います。一度腫れた方は繰り返すことが多い、とも言われています。
「ストレスがかかると親知らずの歯ぐきが痛くなる気がする」と感じておられる方は、思い込みではなく、こうした背景があると考えられます。
むし歯由来の場合
むし歯が神経まで達すると、神経は壊死(えし=組織が死んでしまうこと)してしまいます。すると痛みを感じなくなりますが、これは治ったわけではありません。
炎症の場は歯の内部から根の先へ移っていきます。そのため、しばらく経ってから歯ぐきの腫れや、噛んだときの痛みとして再び現れることがあります。
歯茎の腫れはいつまで続くのか
ピークは3〜4日ごろ、1週間ほどで軽くなることが多い
智歯周囲炎の場合、痛みや腫れは炎症が始まってから3〜4日ごろに強くなり、1週間ほどで軽くなっていくことが多いとされています。歯医者で抜歯処置を受けた場合も、落ち着くまでに1〜2週間程度かかることがあります※4。
ただし、これはあくまで目安です。腫れが引くまでの日数は、生え方や体調によっても変わります。また、前の項目でお伝えしたとおり、日数が経って落ち着いたことは「原因が解決した」という意味ではありません。
受診までにできること、避けたいこと
- ほおの外側から、冷たいタオルや保冷剤をタオルで包んで当てる
- 市販の鎮痛薬を、添付文書に書かれた用法・用量の範囲で使う
- ぬるま湯や水で、強くうがいせずやさしく口をすすぐ
- 痛む側で噛まないようにし、やわらかい食事にする
- 痛む部分の歯みがきは避けず、力を抜いてやさしく続ける
- 温める、長く湯船に浸かる
- お酒を飲む
- 指や舌、つまようじで強く押す。
- 以前もらって余っていた抗菌薬を自己判断で飲む
- 効かないからと、鎮痛薬を目安量より多く飲む・種類を重ねて飲む
特に避けていただきたい、2つの自己判断
歯ぐきが痛むと、つい触って確かめたくなります。ただ、このなかで特に避けていただきたいのが、歯ぐきを自分で押し出したり切ったりすることです。フタの下には汚れと膿が溜まっているため、押すと炎症が周りへ広がってしまいます。
また、以前に病院で処方された抗菌薬が残っていたとしても、それを飲むのは避けてください。抗菌薬は、原因になっている細菌の種類やその方の体質に合わせて選んで出す薬です。合わないものを飲むと効かないだけでなく、細菌がその薬に強くなってしまい、本当に必要になったときに効きにくくなることがあります。
そして、こうした自己判断のなかでも迷いやすいのが、痛みの原因の見分けです。痛み方から見当をつけるところまではできますが、そこから先は、レントゲンで生え方と歯の状態を確認しないと分かりません。逆に言えば、確認できれば痛みの出どころも、繰り返しやすくなっている理由も見えてきます。ご自身で結論まで出していただく必要はありませんので、腫れていない時期のうちに、まずは何が起きているのかを確かめるところから、ご一緒に始めましょう。
よくある質問
- Q. 親知らずの周りが痛いときに、当日に抜歯をしてもらえますか?
- A. 抜歯しない可能性が高いです。腫れて炎症が強い時期は、まず炎症を落ち着かせる処置や投薬を優先し、抜歯は炎症が落ち着いてから行うのが一般的です。ただ、状態や生え方によって判断は変わりますので、その日にできることをご相談ください。抜くかどうかも含めて、診察したうえで一緒に決めていきます。
- Q. 痛みが出た親知らずは、抜いた方がよいのでしょうか?
- A. 炎症やむし歯などの問題が起きている場合は、抜歯を検討する対象になります。「親知らずだからすべて抜く」というものではありませんが、痛みが出た親知らずはトラブルのサインが出た状態です。まずは今の状態を確かめたうえで、抜歯するかどうかをご一緒に考えていきましょう。
- Q. 腫れる人と腫れない人がいるのはなぜですか?
- A. 親知らずが半分だけ顔を出しているかどうかや、親知らずの生え方・抜歯術、骨の密度や硬さななど、様々な要因で腫れる・腫れないは変わってきます。一般的には、下顎の親知らずの方が上顎に比べて骨が硬く、周囲の組織への負担が大きいため、腫れやすいと言われています。
- Q. 妊娠中に歯茎が痛くなったらどうすればよいですか?
- A. 我慢せず、早めにご相談ください。妊娠中はホルモンの影響で歯ぐきが炎症を起こしやすいとも言われています。炎症を抑える処置は時期を問わず行えますが、抜歯のように負担の大きい処置は、体が落ち着いている安定期に行うのが一般的です。妊娠週数と、産婦人科で受けている注意点をお伝えいただければ、その時期にできる方法をご案内します。
この記事の編集・責任者は歯科医師の中田稜です。
歯科医師 中田 稜
- 略歴
- 2022年 大阪大学 歯学部 卒業
- 2022年 医療法人社団アップル歯科クリニック入社
- 2022年 明石アップル歯科 勤務
- 2023年 三宮アップル歯科 勤務
- 2025年 三宮アップル歯科 副院長就任
- 2026年 アップル歯科八尾 院長就任
- セミナー
- モリタプラクティスコース
- DXGCハンズオンセミナー
- i6
- LSGP神戸
- iクリニカルエンド

