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歯は一見すると硬い石のようなものに思えますが、内部に血が通っている立派な器官です。硬い組織に覆われた歯の中心部は「
歯の表面の硬い部分「エナメル質」は人体の中でもっとも硬い組織と言われていますが、その内側にある象牙質を経由して、歯髄まで虫歯が到達することがあります。歯髄腔という閉じた空間の中で炎症が起きるため、行き場のない圧力が神経を強く刺激し、強い痛みとして現れるようになります。
「歯の神経を取る」と聞くと、できれば避けたいと感じられる方が多いのではないでしょうか。確かに、神経を残せるのであればそれに越したことはありません。しかし、虫歯菌に深く侵されてしまった歯髄は、薬で炎症を抑える等の方法で元の状態に戻すことができません。傷んだ神経をそのままにしておくと、痛みが続くだけでなく、感染が歯の根の先まで広がり、顎の骨にまで炎症が及んでしまうこともあります。
そこで行われるのが「根管治療(歯の根の治療)」です。歯の中の感染した神経を丁寧に取り除き、空洞となった根管をきれいに清掃して薬で密閉することで、歯そのものは残しつつ、痛みと感染の原因を断つ治療です。神経を失った歯は栄養供給が止まるため寿命が短くなる傾向はありますが、それでも抜歯したり放置したままにするよりは優れており、ご自身の歯をそのまま残せる点は非常に大きなメリットと言えます。
飲食物の温度差で歯がしみるのは知覚過敏でもよくありますが、刺激を取り除いた後もズーンとした痛みが何十秒も残る場合は、神経まで炎症が広がっている可能性があります。
特に、冷たいものだけでなく温かい刺激でも歯が沁みるときは注意が必要とされています。
食事をしているわけでもないのに突然ズキズキと痛む、夜になると痛みが強くなって眠れない等の状態は、虫歯が歯髄に達して急性の炎症を起こしているサインです。
痛み止めの服用は一時しのぎにしかなりません。必ず歯医者を受診するようにしましょう。
特定の歯で噛むと響く痛みがある、歯茎の一部にニキビのようなふくらみができている、といったサインは、歯の根の先で炎症が起きている可能性があります。
歯の根っこに溜まった膿の出口(瘻孔)が形成されていることもあり、歯の根の治療が必要な兆候かもしれません。
以前に根管治療を受けて被せ物まで完了した歯が、数年経って再び痛み出すことがあり、根管の中に残っていた細菌などが再び増えて根の先で炎症が再発している状態です。
強い痛みや骨の状態悪化を招く可能性がある場合、再度の根管治療(感染根管治療)が必要となります。
はじめに、レントゲンや診査で歯の内部の状態をしっかり把握したうえで、麻酔をかけて治療に入ります。歯の上部にある被せ物や大きく進行した虫歯の部分を削り、歯髄腔に入り口を作って、感染してしまった神経や汚染された組織を専用の細い器具で丁寧に取り除いていきます。
歯の根は1本だけとは限らず、奥歯では3〜4本に枝分かれしていることもあるため、すべての根管にアプローチする必要があります。
神経を取り除いた後の根管の中には、目に見えない汚染物質や細菌が残っています。これらを薬液で洗い流し、根の先までしっかり消毒していきます。根管の形を整えながら清掃する工程は、症状や根の形によって複数回の通院が必要になる場合があります。
十分にきれいな状態が確認できたら、ガッタパーチャと呼ばれるゴム状の材料を根管内に詰めて、細菌が再び入り込まないように密閉します。
根管治療を行った歯は、大きく削られて残っている歯質が少なくなっていることが多いため、その上にそのまま被せ物を装着することができません。土台(コア)を作って強度を補強したうえで、型取りを行い、後日完成した被せ物(クラウン)を装着して治療が完了します。
被せ物の素材には保険適用のものから自由診療のものまで複数の選択肢があり、奥歯か前歯かによっても適した素材は変わってきます。
根管治療は、何度かに分けて通院していただく必要のある治療です。神経を取り除いた段階で痛みは大きく和らぐため、「痛みがなくなったからもう大丈夫」と感じて通院をやめてしまわれる方も、中にはおられます。しかし、治療途中の歯は根管の中身が完全に密閉されていない状態で、被せ物もまだ装着されていないことが多いため、放置すると細菌が入り込み、再び炎症を起こしてしまうことが少なくありません。
さらに、根管治療を行って神経を失った歯は、栄養の供給が途絶えることでもろくなり、噛む力に耐えきれず割れてしまう(破折)リスクが高くなります。8020推進財団が2018年に実施した抜歯原因調査によると、歯を失う原因の3位は歯の破折(17.8%)であり、特に神経のない歯では破折が抜歯原因の26.5%を占めるという結果が報告されています。(※1)一度治療した歯を長く使い続けるためにも、最後の被せ物の装着まで通っていただくこと、そして治療後も定期的に検診にお越しいただくことが重要です。
※1)抜歯の主原因別の割合で最も多かったのは歯周病(37.1%)、次いでう蝕(29.2%)、破折(17.8%)、その他(7.6%)、埋伏歯(5.0%)、矯正(1.9%)の順となった。(中略)有髄歯に比べて無髄歯では破折の割合が顕著に大きかった。
保険診療の根管治療は、使える器具や材料に制限があり、限られた時間の中で進めていく必要があります。一方で、自由診療として行う精密根管治療では、マイクロスコープによる拡大視野やラバーダムによる無菌的環境、ニッケルチタン製のファイルなどを駆使して、より精度の高い治療を目指すことができます。1回あたりの治療時間も長めに確保できるため、結果として通院回数が少なく済むケースもあります。
過去に根管治療を受けたものの再発を繰り返している方や、複雑な根の形をしている歯の根管治療が必要な方には、再治療のリスクを下げる選択肢として精密根管治療をご提案しております。
虫歯が神経のすぐ近くまで進行している場合でも、神経そのものにダメージが及んでいない初期の段階であれば、神経を残したまま治療を終えられる可能性があります。これが「歯髄温存療法」と呼ばれる方法で、自由診療として当院でもご提供しています。虫歯に侵された歯質を慎重に取り除き、神経に近い部分をMTAという特殊な材料で保護することで、神経を取り除かずにそのまま維持できる治療法です。
神経を残せた歯は、栄養や水分の供給が続くため、抜髄した歯に比べて寿命を長く保てる可能性があります。ただし、すべてのケースで歯髄温存療法が適応となるわけではなく、実際に虫歯を取り除いてみるまで判断できない部分もあります。神経を残す可能性を少しでも高めるためには、痛みが強くなる前に早めにご相談いただくことが大切です。
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